これまでの事業報告書

2018年度事業報告書

2018年度
筑波大学 地域医療教育学講座
事業報告書

目次

神栖済生会病院の診療実績

在宅医療 の推進

背景

近年、我が国では高齢者人口は大幅に増加し、死亡者数は2030 年には年間 160万人以上にのぼることが予想されている 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成 24 年 1 月推計)」 。国は医療費抑制のために病院医療から在宅医療への流れを推し進め、病床数を制限している。これまでと同様に病院での看取りを継続していくと、 2030 年には約 40 万人の 国民の 最期に対応できないとされている。 人生の最終段階における End of life care を考えるにあたり、本来の希望と実現には乖離があると考えている ため、家族の負担を最小限にした在宅医療・介護連携を早急に進める必要があ
しかし、厚生労働省の2011 年の調査では、在宅医療を行っている病院が全体の28 %、診療所は全体の 20 %に とどまっている。特に、 茨城県神栖市を含めた鹿行地区の在宅医療の供給体制は人口 10 万人当たり 35.3 人と全国平均( 350.0 人)の 1/10 と圧倒的に不足 している。鹿行地区の 75 歳以上の高齢者人口は今後 10年で 約 150 以上 に 急速に増加し、県 の試算では 2025 年までに現状の 140 以上の在宅医療の供給が必要となる( 茨城県 ホームページ 茨城県地域医療構想 素案 )))。現実には神栖市の病院・診療所を合わせた医師数は 10 万人あたり 81.8 人(全国平均233.6 人,平成 26 年)と非常に少なく、そのうち在宅療養支援診療所の数は神栖市内ではごく少数である。利用できる医療資源が限られている地域では、在宅医療を担う 施設間 ・ 職種間の 垣根 を 越えて支え合わなければ、こ の「在宅医療不足」は 決して解決できない 。

神栖市 保健・医療・福祉連携協議会を通じた在宅医療の普及

2018年度は茨城県の事業である医療提供施設等グループ化事業に応募し採択された。これは、在宅医療を提供する施設同士が連携を強化することで互いの負担を軽減すること、ならびに当該地区の在宅医療の推進を目的とした事業であり、今年度は近隣の3つの診療所と神栖済生会病院総合診療科でグループ化した。
具体的な内容としては、①医療機関同士の連携強化を図るための取り組みとして、協定医療機関の医師同士で定例会議及び事例検討会を計6回開催した。②在宅医療を提供する連携体制等を推進する取り組みとして、多職種研修会(褥瘡、ICTinformationandcommunicationtechnologyを駆使した多職種連携の仕組み作り、人生の最終段階における意思決定支援、認知症ケア)を開催した。③在宅医療の普及啓発活動として、市民公開講座を行い「人生の最終段階における医療について考える」と題し計300名の市民に対し講演を行った。

神栖済生会病院における在宅医療の実績

週平均で5コマの訪問診療を行っており、平成30年度は延べ人数171人、往診回数52回、自宅看取り数15人年となっている。患者の疾患別では、末期がん患者、神経難病患者、慢性閉塞性肺疾患等の慢性疾患により通院困難な高齢者、小児難病患者等幅広く診療している。前述の『ICTを駆使した多職種連携の仕組み作り』の成果として、日々の看護や診療内容のリアルタイムでの情報共有が実現した。その結果、神栖済生会病院と済生会訪問看護ステーションかみすとの連携がさらに強化され、より質の高いケアにつながっている。なお本システム導入時には鹿嶋医師会にも協力を頂き徐々に神栖市内で利用する事業所が増えており、現在では神栖済生会病院以外でも様々な事業所が参加しており、多職種間のスムーズな連携につながっている。

2019年度に向けて

2019年度に向けて2019年度においては新たに非常勤医師も含めて訪問診療を実施できる時間帯が増えるため、患者数も増加できる見込みである。他院からの紹介患者も年々増加傾向であり、当該地区の在宅医療のニーズが高いことが分かる。一方で、マンパワーの問題から受け入れ可能な人数の上限に近づいてきているため院内での診療体制や地域の診療所医師との連携体制を含め抜本的な見直しが必要になると思われる。
神栖市全体としては在宅医療の質の維持、改善に向けて多職種研修会を来年度も開催していく方針である。また、神栖市内の多職種間がスムーズに情報を共有できるように、ICTの普及に力を入れたいと考えている。
さらに、市民への在宅医療の普及啓発活動も同時に進める方針であり、市民参加型の講演会等を計画している。

総合診療科

筑波大学総合診療科は、2017年度より細井医師、高橋医師、海老原医師の3名の常勤医体制を継続しており、病棟・外来・救急・在宅診療業務を行っている。さらに、通院が困難な高齢者やがん患者の増加、在宅看取りなど、鹿行地区の在宅診療のニーズのさらなる高まりに対応すべく検討している。細井医師は、総合診療科長として業務全体のバランスを考え、病棟回診を導入するほか、地域の医療ニーズに応えるべく緩和ケア外来の導入、在宅医療の拡張等を行ってきた。以下に、2018年度の総合診療科の実績について述べる。

入院体制の強化

主には緊急入院の患者が対象であり、疾患も脳血管疾患系、心血管系、代謝・内分泌系、感染症等幅広く診療している。訪問診療患者の緊急入院やレスパイト入院にも対応している。また、後述する緩和ケア外来の導入により、他院からの緩和ケア依頼も徐々に増えてきており、末期がん患者の疼痛緩和目的、療養環境調整目的の入院も増えてきている。病棟からの退院支援に当科の訪問診療を利用する例も増え、今後神栖済生会病院の地域包括ケアシステムの構築の一助となることができると考える。

外来(緩和ケア外来)

当該地区では緩和ケアを専門的に提供している外来が存在していなかった。在宅緩和ケアで培った知識を用いて、広く緩和ケアを必要としている患者・家族へ役立てる診療を行いたいと考え緩和ケア外来を開設した。現在では筑波大学附属病院、国立がんセンター病院など三次医療機関から紹介が増加傾向であり、外来にて疼痛コントロール、意思決定支援を行っている。また、病状悪化時においては当院での入院や在宅医療への移行を行っている。

在宅診療のさらなる強化

通院が困難な高齢者やがん患者の増加、在宅看取りなど、鹿行地区の在宅診療のニーズのさらなる高まりに対応すべく、筑波大学総合診療科から3名の常勤医に加え、同大学総合診療科から2名の非常勤医を派遣している。2009年度から済生会病院の診療支援を行ってきた阪本医師が火曜・水曜に、そして2019年度から春田医師(准教授が水曜に診療を開始し、在宅診療のさらなる強化を行っている。いずれもプライマリ・ケア連合学会専門医・指導医であり、春田医師はがんプロフェッショナル緩和ケアコースを修了し、在宅における緩和医療についても精通している。

救急 体制の強化

2013年度以降に生じた鹿島労災病院を中心とした近隣病院の常勤医師の大幅減少。そして、鹿島労災病院の廃院2018年度末、さらには土浦協同病院なめかた地域医療センターの診療体制の大幅な縮小(病床数を199床から49床に縮小、診療時間外の救急患者受け入れの休止)と、鹿行地区の医療状況は深刻化の一途をたどっている。
しかし、2011年度より筑波大学総合診療科の常勤医が、通院・入院患者を受け入れ、さらに救急患者を積極的に多く受け入れてきた。今年度も引き続き、日中も救急隊からの収容要請に対応している。当院にて対応できる範囲の2次医療で完結できる患者を主に対応しており、緊急入院にも対応している。さらに総合診療科では、当院に常勤専門医のいない呼吸器系疾患、代謝系疾患、あるいは合併症を多く併発している高齢者の複雑事例等に対しても、総合診療科が担当し、入院を受け持っている。

2019 年度にむけて

神栖済生会病院の分院である済生会土合クリニックが、廃院した鹿島労災病院駐車場跡地に2019年7月1日開院予定である。筑波大学総合診療科は分院への診療協力をはじめ、来年度も引き続き上記の病棟~在宅医療までを幅広く提供する予定である。

地域医療教育

この総合診療科の特徴は,糖尿病や高血圧などの生活習慣病、そしてうつ病,認知症など日常診療でよく見られ、かつプライマリ・ケアの観点からも重要な疾患をはじめ、救急患者や在宅診療など、各専門領域の垣根を越えた診療について、専門医資格を有する医師により質の高い診療が行われていることである。さらに,各臓器を超えた総合的な診療が行える医療機関が近隣にないことから,近隣医療機関からの紹介や評判で受診を希望する方も多く、院内外の専門医と協同し、鹿行地区の医療を支えている。
本校の指導教官が、このように地域医療の最前線で自らも実践しながら、現場で医学生に直接指導を行っている。これにより、従来の大学内だけの教育では触れる機会のなかった地域医療の教育の場を提供できている。これは、医学生が将来の医師像を考えるきっかけを作り、貴重かつ必要不可欠な機会となっている。

筑波大学医学類 5 6 年の臨床実習

筑波大学の教育カリキュラムについて

医学類は、1977年の開学当初より「筑波方式」と呼ばれる1年次から基礎と臨床を統合した統合カリキュラムを実施してきた。4年次には8,9月のCBT(Computer-BasedTesting:知識を問う試験)とOSCE(ObjectiveStructuredClinicalExamination:態度・手技を問う試験)を合格することでStudentdoctorの称号が与えられ、臨床実習が可能となる。臨床実習は4年次10月~6年次6月に実施され、合計78週ある。神栖における医学類の筑波大学の臨床実習は、この5年次10月~の後半の時期に位置づけられた総合診療科と医療概論Ⅴが統合した4週間の必修の総合診療/地域医療実習の一部として位置づけられる。医学生は、4週間の実習の初日に総合診療や地域医療における患者・地域を捉える視点を学び、その後1週間ごとに大学の総合診療科をはじめ、様々な地域における医療の在り方を臨床実習として経験する。最終日には、様々な地域で学んだ内容を医学生通しで共有し、学びを深める。神栖の地域医療実習は4週間のうち1週間、医学生3-4人を一単位として、旅館に泊まり込み、地域診断をはじめ、在宅医療、多職種連携、地域住民の体験などの学びが獲得できるよう、神栖市の強みを発揮した臨床実習カリキュラムとなっている。

神栖における臨床実習の実績

実施期間:2018年10月1日₋2019年5月31日
実習人数:93名
実施期間:
2018年10月1日₋2019年5月31日
実習人数:93名
・10月9-12日 4名  ・10月15-19日 4名  ・10月22日-26日 4名
・10月30-11月2日 4名  ・11月5-9日 4名  ・11月12-16日 4名
・12月3-7日 4名  ・12月10-14日 4名  ・12月17-21日 4名
・1月15-18日 4名  ・1月21-25日 4名  ・1月28-31日 4名
・2月12-15日 4名  ・2月18-22日 4名  ・2月25-28日 4名
・3月11-15日 4名  ・3月18-22日 4名  ・3月25-28日 4名
・4月8-12日 3名  ・4月15-19日 3名  ・4月22-25日 4名
・5月13-17日 4名  ・5月20-24日 3名  ・5月27-30日 4名

実習スケジュール (一例)

市内巡回視察

2015年度より、神栖市健康増進課職員の方々の多大な協力を得て開始された。実習初日に、神栖市全体を把握するため、健康増進課職員の方々からガイダンスを受け、神栖市の概要を聞きながら、神栖臨海工業地帯、港公園、ピーマン栽培ハウス、波崎海水浴場、波崎漁港、特産物特売所など、市民の日常生活に密着した場所をめぐり、この地域の特色や住民の生活環境を知る。この経験を通じて、健康の社会的決定要因の理解を深め、地域診断の視点を獲得することを目的としている。

健康教室・ヘルスプロモーション

神栖市健康増進課と協力して、神栖市の小・中学校を対象に喫煙予防教室、成人を対象に生活習慣病教室を開催している。2008年より神栖市の健康教室・ヘルスプロモーションに経年的に関わり、ヘルスプロモーションの第一人者でもある阪本医師により、実習初日、そして、前日の夕方や当日朝に監修・指導を受けた医学生が、指導医とともに健康教育を実践している。この経験を通じて、小中学生や市民へのヘルスリテラシー向上のための工夫について理解を深めることを目的としている。

地域診断

2013年度より、神栖地域を幅広い視点でとらえ、それがどのように医療の問題をかかわりあっているかを理解することを深めることを実習の目的とし、フィールドワークを行う地域診断実習を開始した。2018年度からは、初日のオリエンテーションで地域という広い視野で医療の問題を捉える視点や健康の社会的決定要因などを学んだあとに神栖の地域医療実習に参加するため、地域の街並みや地域住民の意識について深く考察できている学生が増えてきている。

診療所見学

2010年度より、実習に協力してくださっている、かしまなだ診療所、鹿嶋ハートクリニック、こいえ産婦人科医院、城之内医院、にへいなかよしクリニック等の診療所に医学生が訪問し、プライマリ・ケアの原則である包括性・近接性・協調性・継続性・責任性を学ぶことを実習の目的としている。各診療所の外来診療をはじめ、診療所のコンテキストに応じて、透析、緊急心臓カテーテル検査、漢方、訪問診療など幅広い内容を学び、院長先生をはじめ他の職種のスタッフと交流しながら、診療所が行う医療の意義について考察する機会となっている。

産業医実習

2013年度より、日本製鉄株式会社鹿島製鉄所を実習協力医療機関とし、産業医、産業保健師、産業看護師に同行し、産業保健の現場経験を通じて、企業社員のヘルスプロモーションに関する理解を深めることを実習の目的としている。

住民体験実習

2010年度より実施。地域で働いている非医療従事者の仕事を見学し、地域の問題を別の視点でとらえ考えることを通じて、患者や家族の生活背景の理解を深めることを実習の目的としている。実習の協力を得てきた大型青果店である丸やでは、農家や商店などで一日仕事を手伝いながら、地元の人と交流し、その土地と人を知り、その地域の背景や健康ニーズの理解を深めていた。2018年度からは神栖法律事務所とタキマテック株式会社にも協力を仰ぎ、他業種の視点から地域を捉えることで、異文化理解能力が高まることを期待している。

訪問看護実習

訪問看護師に同行し、訪問看護業務を見学し、在宅ケアにおける看護師の役割を理解し、必要な知識、技術、態度について学ぶことを実習の目的としている。

調剤薬局実習

2014年度より、神栖済生会病院の周囲に位置する三つの調剤薬局の業務を見学し、地域における調剤薬局や薬剤師の役割を理解し、的確な処方箋の記載の仕方、医薬連携の重要性などを学ぶことを実習の目的としている。

<2018年度の学生実習の一部>

小学校での健康教室
港公園にて
やや緊張気味の禁煙教室
東国三社として名高い
息栖神社にて
鹿島臨海工業地域をバックに
夏は海水浴客でにぎわう
日川浜海岸に並ぶ風車と夕焼けを背景に

<市内巡回見学の感想の一部>

  • 市の職員さんに、神栖の歴史や特徴、鹿島臨海工業地帯の日本での重要性やそれに伴う市の状況を知ることができた。また、工業だけでなく、漁業や農業も盛んであることを知ることができた。
  • 神栖は海とその近辺にある工場が土台となっており、そこで暮らしている人々と切れない関係にあるのだと知りました。
  • 神栖市の職を求めて、全国から人が集まっていることを、いろいろなナンバーの車が走っていることから肌で感じることができました。
  • 実習前は田んぼ、畑というイメージが強かったのですが、視察すると講演や建売の住居、飲食店など「生活の場」「住みやすい町」という印象に塗り替えられました。
  • ピーマンとメロンの栽培している農家さんのハウスを見学させていただき、農業の大変さと同時に普段野菜を普通に食べられていることへの有難さを痛感した。
  • 鉄道を鹿島のほうから延長するのは難しいが、高速道路を延長することは可能なので、市の発展のカギとなるのは高速道路だと学んだ。
  • 地元の方が「中学まで頭良くても、医学部を目指せる進学校が家の近くにないため断念し、近くの高校に通わざるを得ない」と嘆いていたので、教育的な面の整備が遅れている印象だった。
  • 労働年齢人口が多い神栖市の政策として、18歳以下の子供の医療費削減や小学校の無償化といった、地域での暮らしぶりをより良くするものがある一方で、医療や交通の便では十分な環境確保ができない地域がある、ということを考えさせられた。
  • 農業実習生や海外から帰ってきた日系の方々、海外とゆかりのある人たちが多いことに驚きました。
  • 地域実習ということで、地域の問題ばかり探すような実習をしてしまいがちだったが、街並みもきれいで住みやすい町ではないかと思う面もあった。
  • 一年を通して温暖な気候で過ごしやすい、企業の固定資産税が多い分福祉が充実しているということは、住民にとっては住みやすいのかもしれない。
  • がん検診無料化や児童扶養手当などが充実しており、以外ではあったが皆さん神栖での生活に満足していて、外に出たいという人や現状を嘆くような人は誰もいなかった。
  • 喫煙者が多いのも教育水準や環境が強く影響していると思うので、子供の時の禁煙教室の重要性や公共の場での禁煙を徐々に進めていくのが望ましいと思う。
  • 通院などをされている人は、医師や病院の数が不足していることを実感していたが、病院とのかかわりが薄い方が病院の数が不足しているとの実感はあまりなかった。
  • そう遠くない未来に、医療崩壊してしまうリスクを感じる一方で、地域住民がそれに気づくことができていないように感じた。その自治体・県・国の意向に従わざるを得ないこともあるが、医療に関しては誰もが利用するサービスであるのだから、もっと目を向けて考えていく必要があると感じた。
  • 6歳から隣町の鹿嶋市で暮らしていたが、「あまり鹿行地域について知らなかった」ということを認識した。今回は一歩引いた立場で地域を「客観視」することができました。
  • この5年間、茨城の中でもつくば市しか見てこなかったため、県内のほかの地域に行くことで、文化・交通・医療の状況は全く異なってくることを痛感した。
  • 神栖市は市としては潤ってはいるが、車社会で歩いている人はほとんどおらず、工場勤務者も多く喫煙率が高い一方でコンビナートや大企業の工場も多いため、就職には困らず、若い人も多く、出生率も高い。若い世代の健康を守るための施策が必要なのかもしれない。
田中完先生 (左
鹿島製鉄所にて

<産業保健実習 の 感想>

  • 健診等詳しく教えていただき、イメージが明確になった。
  • 産業医の先生が、会社に働きかけて、社員の安全を守るため、健康を増進するためのシステムを作ったり、変えたりしているということが分かって、会社の保健室的な産業医のイメージが大きく変わった。
  • 産業医総論のレクチャーでは、会社の中での産業医の立ち位置やシステムを作ることによる影響力を知り、やりがいのある仕事だと思った。
  • 産業医のメンタルケア以外の介入を知ることができ、予防医療的な思考が今後役に立つと思った。
  • 共同研究に興味がわいた。
  • 実際訪問しなければ一生視なかったかもしれない景色とその中で働く産業医の姿を見ることができてよかった。
  • 先生の楽しそうな様子と、産業医と話す機会があったことがとてもよかった。
  • 将来の選択肢が増えた。
  • 産業医というキャリアに興味がわいた。
  • 普段あまり病院に来ない、20代~40台の方がどのような体調の不具合を抱えているのかを知ることができた。
  • 保健師さんの仕事を知ることができてよかった。
  • 若年者から退職近くの人までほぼ全員が喫煙しており、上司の命令などで自発的に禁煙外来を受診したわけではない人の禁煙達成は難しい、ことを実感した。
  • 疾患の上流に介入していく体制を多職種協働で職場ぐるみで行っていたのが印象的だった。
  • 産業医も多種多様だという話を聞いて、地域や企業の特性に合わせて、どう変化するのかに興味を持った。
  • 労働環境が非常に暑かったりするのを実体験したうえで、産業医が疾病予防のために行っていることを聞けたのがよかった。
  • 1日かけて行うことで、労働者の視点と産業医の視点を身をもって学ぶことができた。

<実習協力医療機関(50音順)>

かしまなだ診療所
向山 由美 先生 (右
向山 和彦先生(左)
鹿嶋ハートクリニック
の心臓カテーテル室
こいえ産婦人科医院
鯉江 芳行先生
スタッフの方たち
城之内医院
城之内 宏至先生
にへいなかよしクリニック
二瓶 実 先生

<診療所実習の感想>

  • クリニックを開設し、外来で冠動脈CTを含めた検査やカテーテル治療、静脈瘤の手術やペースメーカーなどの植え込みなどの手術も行っており、さらに手術後のリハビリや往診なども行っており、個人のクリニックであっても地域の医療体制を変えるほどの改革を行えることがあるのが分かった。
  • 先生は幅広く患者さんを診ており、病院と違う役割をクリニックは果たさなければいけないということを教わりました。患者さんが困ったら訪れることができる場が提供されており、その存続には患者さんのこと、その背景のことをよく観察することが必要だと教わりました。
  • この地域では、医療スタッフは専門的な対応ばかりではなく、だれもが総合診療のようなことをしていかないと対応ができないことがよくわかった。
  • 医療が成り立つためには、診療所と大病院の両方がそろわないと十分な医療は提供できないのだと知った。
  • 生活習慣指導や小児のインフルエンザなどの予防接種など専門以外のこともやっておられて、貴重な経験となった。
  • 医療過疎地域での地域医療の在り方、開業医の在り方について、その姿で教えてくださった。私のこれまでの人生の中で一番印象に残った。
  • 神栖市の喫煙率や塩分摂取量が非常に高く、三大疾病の発症率も高いことを聞き、一人一人に薬物治療を行うことも大切だが、いかに住民全体の健康意識を挙げ、地域で生活習慣の改善を図っていくことがカギだと思った。
  • 大学病院とクリニックでの透析の差について学習した。
  • 患者さんにどのようなニーズがあって、それに応えるために医療人としてどのような心構えが必要かについても先生にお話を伺い、考えさせられた。
  • 病院の医師とは異なった医療が求められていることが分かった。
  • 大学病院では見られない、地域に即した診療は患者さんの健康維持、がん検診、コモンディジーズの治療などで、地域のクリニックの働きぶりという点でも大変勉強になった。生活習慣がどれだけ健康に悪いのかを改めて実感した。
  • 地域に溶け込んだ医院だからこそ、家族と医師の信頼関係が成り立っており、生活習慣や精神状態を知っているからこそ、その人にあった治療や指導ができるのだと感じた。
  • 住民のヘルスリテラシーを高めるような指導もされており、目の前の患者だけでなく、「地域を診る」を現実化している様子を見て将来役に立つと感じた。
(株)丸や
海老原 孝 治様
(中央)
(株)丸や
海老原 孝 治様
(中央)

<住民体験・他業種同行実習の感想の一部丸や>

  • 青果店の手伝いをすることで、地元の店の雰囲気や客層を感じることができた。
  • 社長の様々なリスクとの向き合い方や挑戦する姿勢、自己分析などを踏まえて、自分の頭で考えて実践し、結果を残している姿に本当にすごいと感じた。また、それを上回る社長の人間性に本当に尊敬の念を抱きました。
  • 「自分は今までやってきた事業ではトップの存在だったけれど、別の世界では実績もないし、下の存在であると気づいた」という言葉が、トップである社長から聞けたのはすごいし、自分が将来医師になった際に絶対に心にとどめておきたいと思いました。
  • 精力的に働いている方々が非常に印象的で、実際業務を一部体験し、重い荷物の積み下ろしなどは負担のかかる仕事でもあり、腰痛などの整形疾患などの慢性疾患管理が必要な方も多いのではないか、と感じた。
  • 従業員の方々のどんなお客さんにも丁寧に接するという姿を感じることができ、社長のどんな従業員でも行け入れるという器の大きさと神栖市の発展を思う熱い気持ちを感じることができた。
  • 社長の病歴や成功者になるための秘訣などのお話を聞くことができ、その姿勢に謙虚で信頼のできる医者にならないといけない、と強く思った。
  • 地域医療を支えているのは、医師や保健師だけではなく、地域の名士を含めた人々であることを感じた。

<住民体験・他業種同行実習の感想の一部(タキマテック>

  • ソーラーパネルなどを扱っているタキマテックでの実習を行ったが、企業理念やどのような活動を行っているか、また施設の内部についてとても丁寧に解説していただき、他業種の業務を通じて、視野を拡げることができた。
  • 地域に密着しながら活動している中小企業の姿を見ることができた。太陽光発電についての投資や実際に各家庭への電気の共有方法についても学べ、医学以外のことが学べてよかった。
  • 職業体験をしながら、地元の方の生の話を聞くことができた。
  • 一緒にドライブをしながら、神栖の歴史を知ることができたのはよかった。
  • 神栖という地域に対する一人一人の思いが伝わってきた。そこから、この地域についても深く知ることができた。
  • 自身とは異なる分野の方との交流を通じて、医療者としての役割を再認識した。

<住民体験・他業種同行実習の感想の一部(神栖法律事務所>

  • 裁判所の中に入ったのも初めてで、裁判を見学させてもらい、法廷はなく会議室みたいなところで驚きました。
  • 他の市には弁護士が一人も居ないということで、やはり過疎地域には医者も少ないとは思っていましたが、他にも必要な職種の人が少なくなっているのだと実感しました。
  • 教育委員会の新年会に参加させてもらい、市長・副市長・教育委員長などの偉い人たちがいて、最初はとても緊張していましたが、皆さん気さくでいろいろ話をしてくださり、その中でも何度も神栖に医師として来てほしいと誘われ、今後医者になった後も、何かの機会があれば、神栖の医療に貢献出来たらいいな、と思いました。
  • 裁判の傍聴や教育委員会の定例会議などに同席させてもらい、医師という狭い世界ばかりにいたことを実感した。司法という世界の仕事がいかなるものかも体験でき、とても新鮮で、また今後関わってくる可能性もあるので学習できてよかったと思う。
  • 地域の弁護士として、中学校で「勉強することの意味」についてレクチャーをしており、弁護士としても地域のために住民教育を行っているのが印象的だった。大人が地域の子供を育ててゆこうという感じがよかった。
  • 安住先生の、人の話を信じず疑わずというスタンスは、人の話からは真実は分からないということだったが、これは医師の考え方にも通ずると思った。患者さんの話をしっかりと聞いたうえで、同情するのではなく、適切な距離感をもって接するよう努めようと思った。

調剤薬局実習(2014年度より開設)

神栖済生会病院の周囲に位置する3調剤薬局で様々な業務を体験し,地域における調剤薬局の役割,的確な処方箋の書き方,医師と地域薬局との緊密な連携の重要性などを学んだ。

<2018年度実習協力機関(50音順)>

○アイン薬局神栖店
○田辺薬局神栖中央店
○中央薬局知手店

<調剤薬局実習の感想の一部>

  • 医師の異動による薬が変化することなどの問題を知ることができ、将来自分が薬を処方する際の意識が変わると感じた。
  • 一包化した薬を教える手伝いや、薬の味見、軟膏の調剤など様々な体験をさせていただいた。
  • 薬の味を知ることで、特に子供に薬を処方する際の説明に活用できると思えた。
  • 病院医師とのやり取りがFAXであったことも印象的だった。
  • 処方の確認に時間がかかっており、チーム医療の妨げになるとも思えた。
  • 普段知ることのできない薬局の現場を見ることができてよかった。
  • 小児でどうしたらきちんと薬を飲んでもらえるかを考える良い機会になった。
  • 正しい薬の飲み方(処方通りにかかさずに飲む、最後まで飲み切るなど)を知らない人が多かった。
  • 医師だけでなく、薬剤師も足りていないことを知った。

<実習全体の感想の一部>

  • 滞在実習について
    ・神栖に泊まり込みで実習することで、地域についてかなり詳しくなりました。
    ・1週間神栖という地域を複数の観点から知ることができ、ました。
    ・自分がこうした地域で働くことを考えると、特定の地域だけで働くことを続けられるかどうか、自信がないとも思ってしまう。
    ・茨城県で生まれ、23年間育ってきましたが、神栖には数回しか着たことがなく、今回神栖のことを1週間住まわせていただき、愛着がわいた気がしています。神栖の医療過疎は非常に深刻で、一刻も早い改善が必要であるという危機感を覚えました。これからまた大学に戻り、茨城の医療について学習を深める所存です。将来何らかの形で恩返しができればと考えております。
    ・医療に限らず、人生や仕事など、多くのことについて考えさせられ、視野が広がった実習であった。
    ・どこよりも充実した実習をすることができた。
    ・普段の病院実習とは様々な方面で異なる体験をすることができた。
    ・茨城県が医師不足であり、医療過疎の地域がたくさんあるということは知っていたが、つくばに住んでいると周りに大学病院も含めた大きな病院がいくつもあり、実際には茨城県の医師不足問題を実感したことはなかった。しかし、今回の神栖市の5日間地域に泊まり込んで実習することで、住民がどのような医療問題に直面しているか、ということを深く考えさせられた。
    ・これから医師になって多くの人と接する機会があるので、患者さんサイドの住民の方とお話ができ、中にはその人の人生観や価値観に驚かされることもあったが、心から尊敬できる人に会ったのは貴重な経験だった。
    ・神栖での実習は医療現場だけでなく、その背景に迫ることができたのは、神栖市の職員さん、旅館の女将さん、先生たちや多くの人たちのおかげだと感じた。
    ・医師に対して求められることは、治療のみならず、治療を提供する環境やスタッフの態度や人間性からにじみ出るものにあるというということが最も大きな気づきでした。
    ・多くの方がこの実習に関わってくださり、実習を支える側の方々への感謝の気持ちが、今までの実習よりも自然と湧き上がってきました。このような実習や研修の場でも、普段はあまり意識しないけれど、実はそれが誰かの努力や気遣いが合ってこそ成り立つということもあるのだろう、ということに気づきました。そういう方たちへの努力に気づき、自然にお礼を言えるような医師になりたいと思います。
    ・神栖の医師の確保が困難という状況が、市の財政や雇用の余裕には関係がなく、このことが行政との温度差なのかもしれなく、本質的なところを表しているのかもしれない、と感じた。
    ・実習で学んだことを活かして、人間性・社会性豊かな医師になりたいです。
    ・毎日おいしいごはんと私たちが安心して泊まれる場所を用意してくださったことに感謝します。
    ・神栖の良さとこれからの課題を身をもって体験できたので、茨城県民として地域に貢献できるような医師になりたいと思います。
    ・宿泊することで他の人たちとの交流があって,深く神栖市を知ることができた。宿泊先で様々な人と交流できるのはとてもいいと思う。その土地の人と関わり,文化的・社会的背景を知り,考え方を知り,地域の特徴や住民の考え方を知ることが医療を提供する上で重要だと知った。
    ・かつて非行に走っていた人々が親となり、その子が親と同様に非行に走ることなく、社会人として成功するという話から、健康の社会的決定要因という観点から親世代の非行は恵まれない幼少期や貧困、社会的支援の少なさなどがあったのではないかと想像されます。しかし、その親世代が鹿島臨海協業地帯の開発に伴い、裕福になったことが新たにタバコや食生活の問題につながってきたのだと感じました。
    ・教育は最大の予防という言葉が印象的で、自分も正しい知識を広めていけるように努力したいです。
    ・神栖市の人たちに交じって生活をすることができ、医学生に理解のない人たちと出会ったときに、どう対応していくかということが大切になると思った。
    ・病棟での実習から大きく離れ、医療だけでなく、その地域自体を見てくるという実習で、個人としては実習中に見えてくる地域のよい点・問題点をどのようによい医療につなげていくかをテーマとして臨んだが、打開案が思いついたわけではなかった。ただ、地域の医療も含めた問題点がみえてきたので、しっかりと考えて今後の役に立てたいと思った。
    ・大阪で生まれ、育ち、茨城へは大学の時からきているので、神栖地域の発展の背景や現状などについては、今回初めて知ることになりました。神栖地域で活躍されている様々な職種の方々との交流を通じて、それぞれの人に自身の住んでいる神栖という地域への思いがあり、信念をもって活動されていることが分かりました。
    ・神栖は、工業地帯であり、労働者が多く、子供の数も多いという特性から、健康に対する啓発活動を積極的に行うなど、地域の特性に合わせて活動していくことは大変重要だと思いました。病気は単に病気を治すだけのものではなく、様々な要因が複雑に絡み合って成り立っているものだと知りました。
野口旅館
女将さんとともに
(中央)

<学生から神栖市への提言の一部>

  • 人々の健康や医療について
    ・多少お金を出してでも、一定数の医師を継続的に派遣してもらえるようにする
    ・医師だけでなく、看護師やセラピストの給料を上げて、働き続けてもらうような環境を作る
    ・神栖でも研修を積めるような病院をつくる
    ・資格が取りやすい環境づくり(資金援助、休暇がとりやすい、勉強の場を設ける)
    ・工場・企業の食堂メニューで減塩を徹底する。
    ・臨床研究のモデル地区(久山町研究のような)となる。
    ・ピーマンを使用した減塩料理を広める
    ・医師の教育ができるような医療体制を整える
    ・健診受診者にインセンティブを与える
    ・特産品(ピーマンなど)を使った減塩弁当を売り出す
    ・県内で医師の多い地域(つくばや土浦)とのアクセスをよくするために高速バスあるいはリムジンバスを通す。そのことで、週に数日でも勤務することができる医師が増え、神栖に住む医師が増えることが期待される。
    ・神栖済生会病院で専門性の高い医療に特化するために、プライマリ・ケアの診療所を増やすとよいと思う・一次予防のための子供たちへの健康を含めた教育の充実
    ・分煙施設の充実
  • まちづくりについて
    ・高速道路・鉄道の整備
    ・神栖でも研修を積めるような病院をつくる
    ・橋を増やす
    ・香取から神栖への電車
    ・教育水準を挙げる
    ・インスタ映えするスポットをつくる
    ・アニメの舞台やドラマのロケ地があれば、積極的にプロモーションする
    ・進学高校を作る。
    ・神栖の高校生向けの奨学金(神栖以外の優秀な高校へ行くための補助)
    ・市のホームページで工場夜景の全国ランキング7位を活かす。
    ・路線バスの本数を増やす

茨城県 医学部進学希望者のための 高校生・中学生 医学セミナー

ヘルスプロモーション(健康教育・講演)

小・中学校対象

住民対象

多職種教育 神栖市内、あるいは 全国の医療職や医療系学生対象

論文・著作等

○原著
阪本直人,釋文雄,堤円香,春田淳志,後藤亮平,前野哲博:かぜに対する認識と受診信念に関連する要因の探索~健診受診者を対象にしたアンケート調査より~.日本プライマリ・ケア連合学会誌42巻,1号,p.28,2019(公開日 2019/03/28,OnlineISSN21872791,PrintISSN21852928,https://doi.org/10.14442/generalist.42.2,https://www.jstage.jst.go.jp/article/generalist/42/1/42_2/_char/ja)

○原著(報告)
宮田潤,阪本直人,二川真子,新野青那,新野保路,大濱弘光,鈴木友輔,武藤理,此下尚寛,楠川加津子:ワークショップ開催報告「ヘルスリテラシー入門~患者さんの『健康を決める力』を高めるために~」.日本プライマリ・ケア連合学会誌42巻,1号,p.7074,2019(公開日2019/03/28,OnlineISSN21872791,PrintISSN21852928,https://doi.org/10.14442/generalist.42.70,https://www.jstage.jst.go.jp/article/generalist/42/1/42_70/_article/char/ja)

○原著【紙媒体版】SakamotoN,HarutaJ,GotoR,YokoyaS,TsutsumiM,TakayashikiA,MaenoT,MaenoT:InternetSurveyRegardingKnowledgeAbouttheCommonColdinJapan.ClinicalInfectionandImmunity,NorthAmerica.Volume3,Number2,pp.3744,2018.

○原著【オンライン版】SakamotoN,HarutaJ,GotoR,YokoyaS,TsutsumiM,TakayashikiA,MaenoT,MaenoT:InternetSurveyRegardingKnowledgeAbouttheCommonColdinJapan.ClinicalInfectionandImmunity,NorthAmerica,Volume3,Number2,2018.doi:https://doi.org/10.14740/cii56w